肥満と腸内フローラ①|レプレ式カラダ辞典

LEPRE式カラダ辞典

肥満と腸内フローラ①

協力(提携先):医療法人社団ひのき会証クリニック・株式会社マメキカク

腸内フローラと肥満の研究

細菌叢の遺伝学的解析、および腸管内容物のメタボローム解析により、
未知の腸内細菌とその代謝産物、消化された食物、腸管細胞、腸管内容物は
相互に影響をしながら腸管腔内に1つの環境を形成していることが明らかとなってきました。
これは1つの代謝臓器と理解するのが相応しく、腸内環境と呼ばれています。

近年、食習慣、運動不足と並んで腸内フローラが肥満の原因となっていると考えられてきていますが、
肥満以外にも、代謝異常症の病態、特に糖尿病の病態形成に影響を与えることに注目が集まっています。

ところで、「腸内細菌が全身に影響を与える」。
このことを世界に知らしめたのは、実は肥満に関する研究からでした。

腸内フローラの産生物質短鎖脂肪酸

肥満の人たちの腸内では、ある種の菌…バクテロイデテス門に属する菌が少ないことがわかっています。

腸内細菌は私たちが食べたものを分解し、それを食べて(栄養にして、エネルギーとして)生きていますが、
その時、腸内細菌の種類によって様々な物質を発酵産生します。
バクテロイデスが出す物質は、短鎖脂肪酸。これが肥満を防ぐのです。

肥満は脂肪細胞が脂肪を取り込むことで起こります。
血管を流れる脂肪を取り込み続け、どんどん細胞が肥大化する為に太ってしまいます。

短鎖脂肪酸

バクテロイデスの出した短鎖脂肪酸は腸から吸収され、血液中に入り、
全身に張り巡らされた血管を通して体の隅々まで運ばれていきます。
この短鎖脂肪酸が脂肪細胞に働きかけると、脂肪の取り込みが止まります。
余分な脂肪の蓄積を抑え、肥満を防ぎ、筋肉などに作用して、脂肪を燃やす働きがあります。
すなわち、脂肪の蓄積を減らし、脂肪の消費を増やすということ。
全身のエネルギーのコントロールを腸内細菌が行なっていたということになります。

腸内フローラの産生物質2LPS

短鎖脂肪酸以外にも、腸内細菌が出す物質が数多く発見されています。
例えばエンドトキシン。エンドトキシンとは内毒素のことです(エンドは「中から」、トキシンは「毒」)。
腸内細菌由来のエンドトキシン、LPS(ripopolysacchareide リポポリサッカライド)は肥満症の病態に寄与していると考えられています。

LPS

肥満では、白色脂肪組織において軽度の炎症細胞浸潤が生じています。
その慢性炎症がインスリン抵抗性、耐糖能異常を惹起していると考えられています。
また、軽度の炎症が腸管のバリア機能に影響を与えていると想定されています。

高脂肪食を摂取させたマウスでは腸内細菌叢の変化が生じ、血中エンドトキシンの増加が認められます。
このマウスに抗生物質を投与すると腸管内の炎症反応が減少し、
肥満、インスリン抵抗性、および脂肪細胞組織の炎症の改善が認められます。

逆にマウスに少量のLPSを持続的に投与すると、高脂肪食摂取マウスと同様に肥満、インスリン抵抗性および耐糖能異常が生じました。
ヒトにおいても、高脂肪食の摂取後は、健常者でも血中エンドトキシン濃度が高値であること、
また食事摂取エネルギー量と血中LPS濃度の間に相関が見られることが明らかとされています。
これらのことから、ヒトの肥満症においても腸内細菌はエンドトキシンを介して病態に寄与していると考えられています。